なぜ雰囲気を”ふいんき”と言うようになった?
2016/03/29
日本語は長い歴史の中でさまざまに形を変えてきました。
たとえば、電話をかける時に「もしもし」と言いますが、昔は「申す申す」だったとか、立ち居振る舞い(たちいふるまい)がいつの間にか立ち振る舞い(たちふるまい)でもOKになってしまったり・・・
言葉の変化って面白いですよね!
私が最近気になっているのは「雰囲気」を「ふいんき」と呼ぶことです。
自分では「ふんいき」と言っていますが「ふいんき」でも通じてしまいますよね?
きっと言い易いように変わっていったんだろうなと思いますが、それにしてもなぜ、どのように変化していったかを考える機会って少ないのではないでしょうか?
今日はその代表格として「雰囲気」という言葉がなぜ変化していったか調べてみました!
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言葉が生まれ、後から漢字が付けられた
たいていの言葉は先に音、つまり読みから始まってその後に漢字がつけられてきました。
話し言葉ができて、後に書く必要性が出てきたため文章が生まれました。
「雰囲気」も同じで、元々「ふんいき」と言っていた言葉に漢字が当てられたそうです。
ですから、漢字を見ればすぐに「ふんいき」という読み方が正しいことがわかります。
実際に、普段「ふいんき」と発音している人に漢字を書いてもらうとたいていの人は書けないか、間違った書き方をするそうです。
ではなぜ「ふいんき」という読み方も存在しているのでしょうか?
間違いではない!?慣用読みというものが存在する
正しい読み方は「ふんいき」なのに「ふいんき」と言い換えられるように、正式な読み方以外に一般に用いられている読み方を慣用読みといいます。
誤読が一般化したものと、言い易い読み方が定着していったものがありますが、大正時代以降多くみられるようになったそうです。
ですから、間違いから一般化していった読み方も間違いということではありません。
正式ではないにしろ通じる読み方として、慣用読みという表現があるんだそうです。
変化するのが言葉だという、日本語特有の文化や柔軟性が感じられますよね。
私は、携帯やパソコンで入力して漢字に変換されれば、正しいかどうかは別として一般的に認知されていると判断しています。
「裏面(りめん)」が「うらめん」だったり、「代替(だいたい)」を「だいがえ」と読んだり・・・というように。
正式な読み方ではないと知っていても、慣用読みの方が日常的に使いやすいというほど浸透している例もありますよね。
例えば「早急」は「さっきゅう」と読みますが「そうきゅう」と言う人の方が多いように感じます。
「さっきゅうにお持ちいたします」なんて言うといつの時代の人ですか?って聞かれてしまいそうなので(笑)あえて「そうきゅうに・・・」と言うことも増えました。
言葉の一部が入れ替わってしまう”音位転倒”
慣用読みの中でも、ひとつの言葉の中で音が入れ替わってしまうことを音位転換といいます。
より発音しやすい読み方がいつの間にか優位になってしまう現象が起きるのだそうです。
まさに「ふいんき」という読み方はそれにあたりますね。
その他に「新しい(あたらしい)」が昔は「あらたしい」だったり、「シミュレーション」が「シュミレーション」と読まれるような外来語も含まれるそうです。
「Simulation」というつづりを見れば一目で分かるのですがカタカナだと難しいですね。
「ふいんき」という読み方もいつかは当たり前になる日がくるのかもしれませんね。
あなたは正しい読み方わかりますか?
他に慣用読みの方が一般的になってしまった例を挙げてみました。
右側に本来の読み方を示してあります。
- 独壇場(どくだんじょう)→どくせんじょう
- 輸入(ゆにゅう)→しゅにゅう
- 有り得る(ありえる)→ありうる
- 間髪(かんぱつ)→かんはつ
- 固執(こしつ)→こしゅう
2の「しゅにゅう」などはさすがにもう通じないレベルで、一般的ではないですね。
3の「ありうる」はまだ使われていますが、否定の意味で使う時は最近では「ありえない」と言いますから、本当であれば「ありうない」になるんでしょうか(笑)
考えてみると日本語って慣用読みであふれていることに気づかされますね。
何気なく発音している読み方も、実は慣用読みだということは案外あるのかもしれません。
今変化の途中にある言葉を知っていると少し寂しい気もしますが、いずれは変化したことすら忘れられる事実になるんでしょうね。
日本語はどんどん単純化してきていると言いますが、言葉が変化していくのは万国共通です。
時代の流れに沿って変わっていく言葉を否定的に見るのではなく、面白いと受け入れられる心の豊かさを持っていたいものですね。